2020年1月30日夜、WHO(世界保健機構)は、新型コロナウイルス感染症について、「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」であることを宣言しました。
また、国内においては、先日、同感染症が、感染症法に基づく「指定感染症」に指定されることを閣議決定し、公布されました。施行日は2月1日となっています。
以前のトピックスで取り上げました「季節性インフルエンザ」については、法律によって就業制限が規定されておりませんが、指定感染症については就業制限の規定があり、罹患した方に対して、国が就業制限を指示できるようになります。
参考:インフルエンザ罹患社員への対応
就業制限についての法的根拠となる条文は、労働安全衛生法と感染症法に規定されています。
労働安全衛生法第68条
伝染病の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者については、省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。
労働安全衛生規則第61条第1項
事業者は、次の各号のいずれかに該当する者については、その就業を禁止しなければならない。ただし、第一号に掲げる者について伝染予防の措置をした場合は、この限りではない。
一 病毒伝ぱのおそれのある伝染病の疾病にかかった者
二 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかった者
三 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかった者
2 事業者は、前項の規定により、就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、産業医その他専門の医師の意見をきかなければならない。
感染症法第18条第2項(概要)
一定の感染症に罹患した者は、一定の期間、特定の業務に従事してはならない。
もし、国から、新型コロナウイルス感染症に罹患した従業員に対して、就業制限の指示があった場合は、上記法令の定めに従い、会社は、その従業員について出勤停止措置を取ることとなります。
その場合、会社は、労働の提供がなかった限度において、ノーワーク・ノーペイの原則どおり、出勤停止中の賃金を支払う必要はありません。
しかし、平成21年度の新型インフルエンザに関する事業者・職場のQ&A(厚生労働省)において、賃金の支払いの必要性の有無の回答箇所に、補足的に「今後の新型インフルエンザの流行状況等に応じて保健所の要請等が変更される可能性がありますのでご留意ください。」との記述がありました。
今回の新型コロナウイルス感染症についても、同様のことが言えますので、会社としては、従業員への適切な安全衛生及び労務管理並びに正しい賃金の取扱いを行うため、今後の流行状況や厚生労働省の発表等には注意を払う必要があります。
参考:新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)厚生労働省