【重要改正4】雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

この度の法改正について、報道などで「同一労働同一賃金」という言葉がクローズアップされていますが、企業が「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」の実務に取組むに当たっては、その内容の基本的な考え方を理解することが不可欠です。

「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」という言葉を「雇用形態に関わらない」という部分と「公正な待遇の確保」という部分に分けて解説していきます。

1.「雇用形態に関わらない」とは
労働法上の「雇用形態」の区分

正規雇用労働者 非正規雇用労働者
・無期雇用フルタイム労働者
(雇用契約期間の定めのない、いわゆる「正社員」、「通常の労働者」とも定義されます)
・有期雇用労働者(6ヶ月契約、1年契約など)
・パートタイマー
・派遣労働者
※派遣労働者については派遣法の改正によります。


「雇用形態に関わらない」とは、上記で左右に区分された「正規雇用労働者」、「非正規雇用労働者」という、その区分の違いに関わらずという意味です。ですので、例えば「正規雇用労働者A」と「正規雇用労働者B」については、雇用形態(区分)が同じなので「関わらない」には該当しません。

2.「公正な待遇の確保」とは
「公正な待遇の確保」とは、言い方を変えますと「不合理な待遇差をなくす」ということになります。
今回、上記1のとおり、「正規雇用労働者」と「非正規雇用労働者」との間の「不合理な待遇差」を次のように定義し、待遇差を設けたり、差別的取扱いをすることを禁止するように法改正されました。

均衡待遇
(待遇とは、基本給、賞与その他の
待遇のそれぞれ)
パートタイム・有期雇用労働法8条
均等待遇
(待遇とは、基本給、賞与その他の
待遇のそれぞれ)
パートタイム・有期雇用労働法9条
・職務内容(業務の内容と責任の程度)
・職務内容、配置の変更範囲
・その他の事情
以上のうち、待遇の性質、目的に照らして適切と認められるものを考慮して
・職務内容(業務の内容と責任の程度)
・職務内容、配置の変更範囲
以上の待遇が同じ事業主に雇用される正規雇用労働者と比較して同一で、雇用関係終了まで同一と見込まれる場合
事業主は上記について不適切な待遇の相違
(待遇差)を設けてはいけません。
(義務規定)
事業主は非正規労働者であることを理由に上記の待遇について、差別的取扱いをしてはいけません。
(禁止規定)


3.賃金の決定
事業主は、正規雇用労働者との均衡を考慮しつつ、非正規雇用労働者の職務内容、成果、意欲、能力又は経験等勘案し、その賃金(通勤手当、退職手当その他厚生労働省令で定めるものは除く)を決定するよう努めなければなりません。

4.福利厚生施設の利用
事業主は、すべての非正規雇用労働者に対し、正規雇用労働者に利用されている給食施設、休憩室、更衣室など健康の保持または業務の円滑な遂行に必要な福利厚生施設の利用の機会を与えなければなりません。(義務規定)

5.説明義務
事業主は、非正規雇用労働者を雇入れたときは、上記1~4の内容について説明しなければなりません。また、非正規雇用労働者から待遇の相違や理由、そのような措置とることとした事項について説明を求められたら、説明しなければなりません。


具体的な取り組みにつきましては、厚生労働省の「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」をご参照ください。



【重要改正1】残業時間の上限規制
【重要改正2】割増賃金率の引き上げ
【重要改正3】年次有給休暇の取得の義務付け